今後のAPECの存在意義?
高市新首相、外交ウィークを終える
韓国が議長国を務めた慶州APEC。高市首相にとって、就任直後のヘビーな外交ウィークの最後を飾るイベントでした。多国間の会議においてむしろ注目されるのは、そのサイドイベントとして開催される二国間会談であることが多いです。今回のAPECの前に中国の習近平国家主席との会談が開かれたこと、また台湾の代表である林信義・元行政院副院長(副首相)と会談し、それに対して中国外務省が報道官談話として強く非難した、ということも報道されました。
その一方、高市首相がAPECの会議場で、インドネシアのプラボヴォ大統領などアジアの首脳と談笑する姿も注目されました。外交について経験は浅かったが大丈夫なのだ、ということを印象づけるようなパフォーマンスともとれますが、首脳外交の要諦はしかるべき場でどのようにパフォーマンスを披露できるかが重要なので、それはそれでよかったのだろうと思います。
私は高市政権の経済・財政政策には非常に懸念を持っています。防衛費も増大、福祉も減らさない、減税もやる、では財源はどうするの?とか。また、円安を是とする政策ももう日本の国力を削ぐだけなので少しは見直してほしい。また、選択的夫婦別姓への消極的姿勢に見られる日本の社会のあるべき姿についての姿勢も懸念材料です。
だから彼女を全面的に支持しませんが、それでもこの外交ウィークを、高市首相は概ねうまくクリアーしたかなと思います。なんといっても、このウィークの直前まで、誰が首相になるかが不透明で、「もしかしたら石破さんがトランプのホストするのかも?」などともささやかれていたわけです。日米共同声明などが出なかった、などという批判も見ましたけど、そんな調整が出来る状況ではなかったのではないでしょうか。高市首相をベタ褒めするのも変だと思いますが、変に叩くのもおかしいと思います。
そういえば、私はちょうど総裁選が終わって、そのあと公明党が連立から外れた直後のNHK「日曜討論」に登壇したんですが、そのとき、次期首相が決まらない段階で、日本の外交課題を語る、というこの回のお題、なんという無茶振りな、と他の登壇された先生方と放送前の控え室で苦笑いしたものです。(依頼があったのは公明党の連立離脱前で、高市さんの首相指名が確実視されておりその直後に話が変わったのです)。
APECは終わった?
さて、本題です。APECの話。APECでは首脳会議が開催された際には首脳宣言が採択されるのが通例です。今回採択された「慶州宣言」で、世界貿易機関(WTO)への言及がいっさいなかったこと、また「多角的貿易体制を支持する」という文言もまるでないこと、が話題になりました。そして、これまで繰り返されてきた、保護主義と闘う、という文言も消えました。私も、今回のAPEC前、首脳宣言の文言はどうなるかを注視していたのですが、ああやっぱりこうなったか、と思いました。
とはいえ、今回の変化で、APECの存在意義がなくなるとか薄れるとかはないのでは?むしろ、新たな状況の中で、APECの目指すべき方向性が変化しつつあるのだと考えています。そのことを単に意義が低下、という一言でかたづけない方がいいのではないか、というのが私の立場です。